2013年5月8日水曜日

アルカナハート回想録5



3.独自性を出すサブシステム

アルカナハートでは「ホーミング」がサブシステムにあたります。
これは当時、スト3サードで言うところのブロッキングに値するシステムとして考えたものです。
えっ!って思うかも知れませんがそうなんです。

根強いファンがついている格闘というのは、なにかひとつ他のゲームにはない特徴を持っていますよね。例えばジェムだったりジャストディフェンスだったりとか。 キャラ単体で見ても特徴的な技をもつキャラは長く愛されます、炎邪とかズィーガーとか。

固有のサブシステムによって、独自の立ち回りが必要となる。
この部分が無いか薄いと、他の格闘ゲームでいいじゃないかと言うことになり、逆に突出しすぎていると他の格闘ゲームで培ったセオリーが通じずプレイ層が狭くなるか、バランス崩壊を起こしてしまう。まさに諸刃の剣ですね。

ホーミングのシステム案はかなり初期からあって「打ち上げて追いかけて叩き落とす」という一連のコンボを、サムスピの絵を使ってテストしていました。
イメージ動作を簡単に作って、プログラマさんに、こんなことやりたいんだけど出来る?みたいな感じで。

正直、このシステムは行けると思っていました。
元々2D格闘というのは横軸移動での読みあいが適しています。そこへ2段ジャンプ、空中ダッシュなどの要素が入ってきて縦軸の移動の自由度が増えた。
そうすると当然、キャラ同士が接触する機会が減ります。
対処作として、技のあたり判定を大きくするか、でかい飛び道具を打つゲーム性になっていくわけですよね。

ホーミングは、ボタンひとつで必ず相手と接触する位置まで移動できるので、縦や横への移動範囲が広くなっても、どこかで必ずキャラが接触できる。
ホーミングのおかげでこれまでにないほど画面を動き回れるゲームデザインにすることが出来ました。

4.画期的な背景演出
ステージについては、天草降臨の天草空間や、飢狼伝説でのラウンド数や時間経過で変化するといった演出に影響を受けていて、世界感を説明するだけでなく、状況の変化をわかりやすく見せることが出来る優れた見せ方だとずっと思っていました 。
プレイしていない人や、ゲームシステムやキャラをよくわかってない人は、見ているだけでも、画面の変化を感じられますしね。

特にパワーアップ時に背景が変化するという要素は、ゲーム展開のメリハリと連携でき、気分も盛り上がるので、入れ込みたかった。

たまたま、アルカナで使っていた基盤というのが、一度にたくさんの絵を読み込んで置くことができたので、広大なフィールドを2枚分をロードを行わず切り替えることが出来たんですね。

世界観設定も同時に考えていたので、じゃ、今見えている背景とは別に平行世界があって、パワーアップした時に平行世界が見えるのはどうかなと考えて、それならば実際にある場所の方がいいよね。って流れで、実在の場所をステージに使うことになりました。
関東が舞台になっているのは、学園物なので地域を限定しようってのもありますが、どちらかといえば単純にプレイヤー人口が多かったからです。
この時は、海外展開も一切考えていませんでしたし。


5.最先端のグラフィック

最先端のグラフィックだけはどうしても実現が出来なかった。何故かというと2D格闘のコストのほとんどはグラフィックにかかるからです。
制作費=グラフィックのレベルと言っても良いくらい。

正直、潤沢とは言えない制作費だったので、かなりコストダウン出来る方法で作画してはいますが、それでも動作枚数は大幅に削る必要がありました。
初代アルカナハートは、当時の他のゲームと比較しても、技の数が少ないのは単純に制作費の問題です。

私の中では、これだけ技が少ないなら対戦格闘とは呼べないんじゃないかというのもあって、ジャンルが対戦アクションになっています。

でも、実ははぁとだけ動作が多いんですよ。
例えば、空中専用のアルカナ技アクションがあるのは、はぁと冴姫だけですね。
最初にはぁとを作ってみると結構時間がかかった。で、他のキャラを作る際には動作枚数を削らなければいけなくなり、地上モーションの足元に魔方陣を置いてみたら、全然違和感ないので、じゃ、他のキャラはなくしましょうと。
そうやって、かなりの工夫を重ねて枚数を減らしてます。

しかし、極限まで動作を減らせといっておきながら、ホーミングだけは削らないでくれ、と。この動作だけは、他のゲームとの差別化に必要でしかも使い回しが効かない。

ゲームを作りかけでまだ完成形を模索していたこともあって、グラフィッカーからはホーミング動作を削ってくれと随分言われましたね。でも、お願いだから残してくれと。 舞織なんかはどの方向を向いてても同じ絵で済むようにしてでも残しました。

それじゃ、削るだけ削っておしまいかと言えばそうではなく、別の工夫を盛り込んでいます。それがアルカナブレイズです。グラフィックを綺麗に出来ないのであれば、見せ方を工夫しようということで、最初にパルティニアスの巨大玉が出来た。さすがにあそこまで大きい飛び道具を2D格闘では見たことがないだろうと。
そうするとスタッフからいろんなアイデアが出てきて、逆にすごく小さいテンペスタスなんかが生まれてきたんですね。